ジャン・マル・モルメク観戦記
1940年代に一世を風靡したボクサーがいた。強かったのは言うまでもなく世界ミドル級チャンピオンに輝き、シャンソン歌手ピアフとの激しいロマンスは有名だ。しかし彼は突然この世を去った…飛行機事故だった。フランス国民に愛された英雄マルセル・セルダン。彼の名を冠した体育館がパリにある。(一度はこのマルセル・セルダン体育館で世界戦を見るのが夢のひとつだったんだよなぁ。それがモルメク×ヘイで叶うとはラッキーだなぁ…)
地下鉄ポンド・ルヴァロワ・ベコン駅から数分のところにある会場の前には沢山のムッシュ、マダムの姿があった。フランスのイメージには合わないが確かにボクシングファンは存在するのだ…
外観からすると大きなアリーナを想像するのだが、キャパシティは5000人らしい。
既に前座が始まっていた場内に足を踏み入れると、呆気に取られた。その瞬間に先週と比較してしまった
…(カーディフのミレニアムスタジアムが巨大だっただけに余計にこのマルセル・セルダン体育館は小さく感じるなぁ〜。どう見ても後楽園ホールを少し大きくした程度だ…どっから見ても目の前、って感じや。)しかし、だからと言ってファンの熱気が決して減る訳ではない。逆にこの狭い空間に熱気が濃密に凝縮されているようだ。
手には99ユーロで買ったチケット。席に行こうにも座席表示「RANG-Z6 PLACE-3126」に困惑…(ん〜どこなんだぁ、この席は〜訳が分からんぞ…)
係員に案内された席に着いてもう一度唖然…(いやぁ、これじゃホントに後楽園ホールで見るのと同じ感覚だよ)狭いアリーナ席の後方、前から6列目で、更に仰天したのが、席の隣が選手の入場口だったのだ。まさに次々と驚きの連続だった…
この日は合計6試合。前座は6回戦が一試合、8回戦が2試合、12回戦が2試合にメーンイベントが12回戦の世界戦。
隣席の地元ファンはスポーツ新聞を広げ試合への展開予想記事に対して分析を下しシュミレーションしているようだった。もちろん両者の体格データの比較にも余念がない。紙面の写真にチラチラ視線が流れ横から覗き込んでしまった…
前座が続くなかで地元の選手の攻勢があると隣から「ア〜ラッラ、ラ〜」という感嘆が聴こえてきた。そこには哀しみとも喜びとも取れる響きを含んでいた…(おいおい、ア〜ラッラ、ラ〜って…日本じゃ、ア〜ラッラ、ラ〜なんて言うとピンチになった時に出るフレーズだよなぁ。フランスでは攻勢の時に言うのか???な〜んか違和感があるなぁ)そして又、横からは喜びの「ア〜ラッララ、ラ〜!」
第一試合を除いてKO決着が続きテンポ良く進行していた。その結果、TV中継の都合のためか何度かの休憩…(どこの国も一緒だなぁ〜。早くやろうよ…せっかくKOで早く進んでたのに。あ〜、帰る時間が遅くなるばっかりなんだからさぁ)
再開しての第四試合。世界ランカーのクリストフ・カンクローが登場。(お〜確か1月にスイスへ行った時、前座で見たなぁ…なんとも奇遇な)
セミファイナルのWBC-Sライト級挑戦者決定戦ではWBAの前チャンピオン、スレイマーヌ・ムバイエが登場し見事4R、TKOで挑戦権を獲得。
さぁ、前座は全て終わった。
リングサイドには世界王座に君臨したマヤール・モンシプールの姿も見えた。毎試合、勇猛果敢なファイトで絶大な人気を誇っていた。(わぉ〜、あのモンシプールだよっ!!)
『Le Duel』決闘と銘うたれた世界戦。最強の挑戦者が統一王者に挑む、まさに決闘だ!
先ずリングに登場したのはイギリスの新鋭『Heymaker』デビッド・ヘイ。ランキングは1位。破壊力抜群のKOパンチャーだ。唯一ガラスの顎が致命的か…
トランクスには一面ユニオンジャックがあしらってある。ハンサムな顔に笑みを浮かべているが世界戦初挑戦への緊張を隠すためなのか(?)
受けて立つのは『The Marksman』ジャン・マル・モルメク。3月に王座に帰り咲いたWBA・WBCクルーザー級の統一チャンピオン。まるで筋肉という鎧を身に纏っているようだ。王座から陥落した時に露呈したスタミナが懸念される…
『ロッキー3』に出演したミスターTを彷彿させる顔には少し堅さが見える…初防衛戦へのプレッシャーか(?)
何やら波乱を予感させる雰囲気のなか英仏の国歌斉唱。ギッシリと埋め尽された観衆も緊張気味。
ゴングが鳴った!
(さぁ、期待のヘイがどこまでやれるか、とくと拝見だな…)
第1R開始からチャンピオンの圧倒的な先制攻撃。(開始早々、挑戦者に余裕のないうちKOを狙ってるのかな…先手必勝だな)ガードを固めながらの前進に加え、重いパンチが挑戦者を襲う。
隣からは『ア〜ラッラ、ラ〜』の連発。(モルメク最初からエンジン全開やなぁ。倒しに行くのはいいが、スタミナは大丈夫かなぁ…もし倒し切れなかったら王座陥落した時みたいにガス欠で逆転KOされかねないなぁ)
劣勢ながら挑戦者ヘイも絶え間ないパンチの合間を縫ってのボディ攻撃が目につく。(ん〜ヘイはモルメクからスタミナを奪う作戦だな。ジワジワ…とこのボディ攻撃が効いてきそうだなぁ〜)
第4Rついにモルメクの豪快なパンチがヒット!側頭部にガツン!堪らず後方にバランスを崩し挑戦者ヘイがダウン…打たれ脆さが露呈してしまった。(お〜ヘイがダウンかよ…ありゃりゃ〜意外な展開になってきたぞ。ヤバイな…効いてるよ。ん、自陣のコーナーに頷いてるな、OK〜OK〜と…冷静だな)モルメクがダウンを奪ったのでファンの興奮も最高潮に達していた。
一気加勢にモルメクが勝負をかけると思いきや攻める気配がない。(いやぁ、モルメク、ここは倒しに行くべきだろぉ…ヘイの足がフラついてるよ)粘ってしのいだ後、回復してきたヘイが逆襲!
モルメクに疲れが見え始めた第7R、ヘイのパンチが狙い撃ちの如くヒット。ガードを固め徐々に後退するモルメク…強烈なボディブローでモルメクの動きが止まる。ロープに詰まったところでヘイのパンチが炸裂!!容赦なくヘイの右アッパーから左フック、そして振りかぶって放たれた右フックが命中!まさに大木をなぎ倒さんばかりの迫力だ。赤コーナーに倒れるモルメク…必死に立ち上がるもレフェリーの腕が交差された。(ア〜ラッラ、ラ〜あれを喰っちゃあなぁ〜。第4Rが勝負の別れ目だったな…)老兵ついに堕つ。KOタイムは7R1:04だった。
王座を明け渡したモルメクはリングサイドの放送席でインタビューに応じていた。
一方、肩と腰にチャンピオンベルトを巻いたヘイは誇らしげに胸を張っていた。観衆も新しく誕生したチャンピオンに惜しみない拍手。(おめでとう、ヘイ!ダウンを挽回しての逆転KO。いい試合だったよ、満足々々)
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フランスの英雄、マルセル・セルダンの名を冠した体育館。 |
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栄光を目指す若きボクサーたち! |
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返り咲きを目論む元世界チャンピオン。 |
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待望のチャンピオン登場に沸くパリジャン。 |
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パリジャンも新しく誕生したチャンピオンに惜しみない拍手。 |
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一夜明けた日曜日、昼下がりの凱旋門。 |
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サクレクール寺院からパリを眺望。
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